sachoo

名も無き世界のエンドロールのsachooのネタバレレビュー・内容・結末

3.8

このレビューはネタバレを含みます

マコトにとってドッキリは、大切な人を世界に繋ぎ留めるための手段だった。だからヨッチへのプロポーズ大作戦が未遂に終わった時、マコトの世界は壊れてしまった。指輪を渡した時の顔が見たいという狂気のような執念に囚われた10年。

一方、3人でいることで出来ていたキダの世界も、ヨッチが欠けた時に3分の1が欠け、マコトがいなくなったことで崩壊寸前だった。いくら我欲の薄い人間として描かれているとはいえ、マコトを探すために裏社会に身を投じたり、計画に全面的に協力する姿はあまりにも破滅的に見える。
キダは壊れかけた世界で必死にもがいている。

ヨッチは3人の中で一番現実に絶望している。
「1日あれば世界は変わっちゃうんだよ」
世界が変わり等分の三角形ではいられなくなった日、彼女は声をあげて泣く。
そんな彼女が一番恐ろしいのは世界から忘れ去られること。

10年の時を越えてヨッチの思いに応えるために決行された計画は、マコトにとっては既に終了した世界の長いエンドロールを止めるためのものだったし、キダにとってはエンドロールの始まりだった。 

ラストシーン、3人で出来ている世界で他の2人を少し離れて見てるのが好きと言ったキダの願いそのままの情景は、とても美しくそして物悲しい。
命を掛けたドッキリは、キダを世界に繋ぎ留めたいマコトの祈りだったんだろうなぁ。
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