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バービーのsachooのネタバレレビュー・内容・結末

バービー(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

永久に不変で完璧なはずのバービーランドで、ある日ふと〈死〉について考えたバービーの体を異変が襲い、原因を解明するためバービーとボーイフレンドのケンは現実世界へ向かう。

一番共感したのは序盤のケンだった。一生懸命だけど自分のやっていることの意義はわからず報われない。
バービーランドでは大統領や外科医や学者等、重要な役割を女性が占めて社会を回しており、一方で女性の付属物扱いの男性は毎日何となく狭いビーチで過ごしている。
女性と男性の立場が現実とは反転状態になっているため、シンプルに自分と同じ属性のキャラクターに感情移入する作りではないと感じた。

老いも若きも様々な人の暮らす現実世界で、バービーは生の実感を得ると共に、女の子達をハッピーにしてきたはずの自身の存在意義が揺らぎ始める。
一方ケンは男性中心の社会に触発され、理想の国・ケンダムを作ろうとする。
その後のケンの振る舞い(マンスプレイニング、自己満足の弾き語り、戦争)はストレートに皮肉が効いていて苦笑してしまうし、現代女性の生きづらさについて述べるセリフには「あるある」と深く頷いてしまう。

けれど私たちが受けとるべきはバービーとケンが対話した時のケンの本音「自分を見てほしい、大切に扱ってほしい」という所だと思う。
女性も男性も、その性別や地位に関わらず一人一人が尊重されるべきだし、それは恋愛的なケアを相手に求めることではない。

未だにその実現には程遠い現実世界で、人間として生きることにした〈何者でもない〉バービーの前途は苦労が多そうで心配。だけど応援せずにはいられない。
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