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ファースト・カウのsachooのレビュー・感想・評価

ファースト・カウ(2019年製作の映画)
4.2
開拓時代という、ある種の無法地帯。うっそうとした森林に囲まれ、泥地の上の掘っ立て小屋に住み、日々の食料を何とか確保する他の娯楽といえば酒、ポーカー、ケンカばかり。剛胆さや無鉄砲さは評価されても平穏を愛する優しさや慎重さは求められない。そんな時代、そんな地域で暮らすということが解像度高く、細やかに描かれる。 

枯れ葉や枝を踏む音、湿った土の弾力、森の匂いが立ち上ってくるような映像美も圧倒的。シンプルに贅沢な映画を見たなという満足感があった。

臆病で心優しい料理人のクッキーと中国人のルー。2人が出会い、手を組み、成功を夢みる…スイーツという生活の中の喜び、余裕、その当時軽視され切り捨てられがちだったものを武器として。

冒頭に提示された結末に向かって何かが起こることを身構えながら観た。あの後、あそこで何かが起こった。もしくは何も起こらなかったのか。想像に委ねるラストが美しいと思った。 

〈鳥には巣、蜘蛛には網、人には友情〉
そこにはただ、友情が残った。
 
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