MasaichiYaguchi

ぜんぶ、ボクのせいのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

ぜんぶ、ボクのせい(2022年製作の映画)
3.7
松本優作監督の商業デビュー作では、児童養護施設から飛び出した優太、軽トラで暮らすホームレスの男・坂本、家にも学校にも居場所がない少女・詩織という心の傷を抱えた3人の男女が出会い、絆を深めていく様が映し出される。
児童養護施設で母の迎えを待ちながら暮らす優太は、或る日偶然、母の居場所を知る。
優太は会いたい一心で施設を抜け出して母の許に向かったが、そこにいたのは同居する男に依存し自堕落な生活を送っている母だった。
絶望した優太は、当てもなく海辺を歩いていると、軽トラで暮らすホームレスの男・坂本に出会う。
坂本は何も聞かず優太を受け入れ、2人は僅かな金銭を稼ぎながら寝食を共にし始める
やがて優太は少女・詩織とも顔見知りになり、自分と同じ寂しさを抱えながらも心優しい詩織に惹かれていく。
しかし、穏やかな日々は或る事件によって終わりを告げる。
ネグレクト、分断と格差、援交等、本作は日本社会のリアル、それは闇といっても良いと思うが、そういったものを浮き彫りにしながら、それと対比するように孤独を抱えた3人が寄り添う様を温かく描く。
しかし現実は余りにもシビアで、それがタイトルの意味に繋がっているように思える。
それでも松本監督は、“パンドラの箱”のように大瀧詠一さんの「夢で逢えたら」で幕を閉じる。