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呪詛のymmtdiskのネタバレレビュー・内容・結末

呪詛(2022年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

 とてもよかった。モキュメンタリーホラーなのだけど、街や病院などの防犯カメラの映像や、精神科の記録映像も含まれている。About Netflixの記事に書かれているように、『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』『パラノーマル・アクティビティ』のようなPOVで、さらに『ヘレディタリー/継承』や90年代ジャパニーズホラーの湿度も持ち合わせた、厄介な映画である(褒めてる)。
 印象的なポーズに謎の儀式、息が詰まる恐怖とびっくり系もあるし、『ほんとにあった!呪いのビデオ』的な映像もある*1。あと、虫、カエル、閉所、後半はトライポフォビアも刺激してくる、たくさんの「嫌なこと」が含まれているので要注意。

 数年前、超常現象を調査するという動画配信をしていたルオナンとボーイフレンド、その弟の3人が、ボーイフレンドの出身地である山奥の集落に古くから伝わる因習、土着信仰を軽率に茶化したことからこの呪いは始まっていく。現在のルオナンの行動にも軽率なところが見受けられ、それによって深みにはまっていくので、ルオナンには「あーあ。」という落胆の感情しか湧き起こらない。

 養父のチーミン、この映画でただ一人、善意を基本として動いている。ドゥオドゥオのことを助けたくて、母親から引き離すため裁判所に訴えるが、母親はやはりルオナンなのだと思い、根本の原因である呪いを解くために協力をし、呪詛に蝕まれる。

 冒頭で「娘を助けるために」と視聴者に展開された符号・呪文が、中盤で「祈る人が多いほど、幸せの力が集結される」と説いた呪文が、ラスト10分で裏切られる。「ごめんなさい、嘘をついた」と。それは、動画配信の視聴者自身に呪いを受け入れされるための「呪詛」の伝播であった。呪いをできるだけ多くの人々が受けることで、一人に現れる呪いの影響が薄まるらしい。それによって娘の命を守ろうと考えたのだ。チーミンが辿り着いた事実についても、ルオナンはドゥオドゥオの出産前から辿り着いていたことが示唆され、他者に降りかかる不幸を厭わない行動に「てめぇ!」となる。

 『リング』では「呪いのビデオ」によって伝播するという現象を怖がっていたけど、現代でこうやって動画配信の視聴者を当事者にする展開は、自分の経験上初めてかもしれない。呪詛のタネ明かしが始まるあたりで「なるほど!」と興奮した。POVやモキュメンタリーは「第四の壁」が薄いということを実感した。

 以下、雑感。

- 「名前を捧げる」他にも、耳、髪、歯となかなか強欲な邪神。
- 「名前を捧げる」が結構ポイントになっていると思うんだけど、他にも要素が多すぎて薄まっている気がする。
- ソーシャルワーカーのおばさん(シアさん?)が呪われたのはいつ?
- 名前入りのお守りを買ってきたことが原因か?
- 見えない存在に連れられたドゥオドゥオが、集落にいた女の子を病院の近くで発見する。
- この女の子は「神様に選ばれた」あの女の子だよね……
- 仏母との対峙に向けて、もう片方の耳や髪の毛など供物を得るため……にしては現れた経緯がよくわからん。
- あの子自身は「神様に選ばれた」ことを受け入れているわけだし、ルオナンがビデオカメラを持ち出すことを引き留めているようにも見えた。
- このあとどうなったんだろう。死んではいない気がするが……
- ちいちゃんの影送り、って最後の呪文唱えるところか。
- 蓋を開けてみたら「タブーを犯した」どころか、儀式自体をめちゃくちゃにしちゃってるじゃん。
- 90年代に流行った「この話を聞いた人は、何日後に――をしなければ……」みたいな話を思い出した。

 ケヴィン・コー監督は続編の制作の取りかかっているらしい。このお話の10数年後、今度はドゥオドゥオを主人公として、再び仏母と対峙するようなお話かなぁ。あとは「集落にいた女の子」もその後が気になるし。となんとなく想像するけど、観たいな。

 トレンドにあったのを見つけて気になっていたところ、アトロクで宇垣総裁が観たと語っていて、それならばとその日のうちに視聴した。
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