味噌のカツオ

天間荘の三姉妹の味噌のカツオのネタバレレビュー・内容・結末

天間荘の三姉妹(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

見た人の感想が若干微妙な反応が多かったり、2時間半という本編の長さも気になって躊躇していたのですが。
そこは のんさんを応援したいという一心で見てまいりました。

ぶっちゃけ“微妙”というのは うなずけるところもあって。その理由というのが、監督が北村龍平という点でありまして。
過去にもそれ相当の作品を撮ってはいますが、傑作と言えるようなものは…しいて言うなら“アタリ”がないという感じでして。

それを承知で鑑賞しての感想は、悪い物語ではないけれど、悪い所もいっぱいある…というものかな。

じつはファーストシーンはメチャメチャ素晴らしくて。
大島優子演じる旅館の若女将がカメラに向かって客人を迎える練習をしているのですが。

カメラがパーンすると 写っていたのは鏡で、じつは観客は鏡に映った大島優子を見ていたと。
これはまさに、我々が目にするのは現実世界ではない…ということを示す導入部でもあり。その誘い方にグッと引き込まれました。

そして海を映すシーンでは高い空は澄んでいるのに、砂浜は曇ったような暗さをまとっていて。
単純にバランスのわるい絵にはなっていますが、天界と地上の間の世界という意味では、この不穏さも良かったです。

本編の物語としては、亡くなった人たちへの消えることのない思いであるとか、自分自身と向き合うことの表現としては、至極真っ当な映画だったと思います。

ですが、ちょっとスピリチュアルとファンタジーの境界の表現は どこかの宗教映画のような感じに見えてしまったり。
ふたたび生きることを選んだ主人公・たまえの行きつく先がイルカの調教師というのは なんだろうかと。
そこに必然性を見いだせなかったというのが正直なところですが。

それ以上に残念だったのが、そのラストで 演者であるのんさんが、実際にイルカに乗った映像が無かった点ですね。
作中、門脇麦さんがイルカでサーフィンしてる場面があって「スゲエな」と思わされたのですが。

残念ながらのんさんは、イルカに乗っている風の笑顔だけで、リアルな映像はなく。
いろんな事情や状況はあったのかもしれませんが、なにせクライマックスというか実際のラストシーンなのでねぇ。

ここで映画の説得力がグッと下がってしまって。わたくし的には正直、ちょっと引いてしまいました。

というわけで“見た人の感想が若干微妙”という点に同意せざるを得ないなと。
そして2時間半という長尺さについても、やはり終盤のキレの悪さは感じてしまいましたし。
いいキャストがそろってただけに、もったいないなぁ。
味噌のカツオ

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