Inagaquilala

ザ・バンク 堕ちた巨像のInagaquilalaのレビュー・感想・評価

ザ・バンク 堕ちた巨像(2009年製作の映画)
3.8
舞台はめまぐるしく移っていく。まずはベルリンの空港から始まり、インターポール本部があるフランスのリヨン、主人公が悪を暴こうとしているルクセンブルグの巨大銀行、そしてイタリアのミラノに飛んだかと思えば、次は作品の見どころでもあるニューヨークのグッゲンハイム美術館での銃撃戦、最後はインスタンブールの街のスカイラインでのアクションシーンと、とくに最後のインスタンブールはなぜその地かと考えれば、「007 ロシアより愛をこめて」へのオマージュではないかと思った。このダイナミックな舞台展開だけで、自分はこの作品をフェバリットリストに入れてしまう。

ドイツ出身のトム・ティクバ監督、最近では「クラウドアトラス」(2012年)や「王様のためのホログラム」(2016年)など、いずれも壮大な絵づくりが印象的な監督の2009年の作品。国際的マネーロンダリングや武器売買に手を染める巨大銀行の悪行を暴こうとするインターポール捜査官サリンジャー(クライブ・オーウェン)の世界を股にかけた活躍を描いていく。それを助けるニューヨーク検事局のホイットマン検事補(ナオミ・ワッツ)とのラブアフェアーも挟みながら、物語はめまぐるしく展開していく。

アクションシーンの舞台設定にはとくにこだわりがあるらしく、ミラノの広場での暗殺シーンや、ニューヨークのグッゲンハイム美術館での銃撃戦(実際の銃撃戦シーンは巨大なセットをつくって撮影したらしいが)、ラストのイスタンブールの民家の屋根を伝っての追跡劇と、とにかくそれを観るだけでもじゅうぶんに楽しい。実際に起こった事件に題材を採っており、確かに巨大銀行の闇を描こうとしている姿勢は見えるのだが、観賞後の印象としては、巨悪を追求するというより、主軸はこの派手なアクションシーンにあるのではないかと思わせるほど、見事によくできている。

銃撃戦とかはあまり好きではないのだが、このグッゲンハイム美術館を再現してのシーンは、あの螺旋状の建物の構造ともあいまって、素晴らしいサスペンスを生み出している。もしかしたら、このシーンを撮りたくて、この作品を考えたのではないかと思えるほどだ。たぶん、映画史の中でも語られる銃撃戦のシーンになることだろう。

原題は「The International」で、監督の意図がこもったタイトルだと思う。邦題も悪くはないが、ならばネタバレのようなサブタイトルは外すべきである。やはり、この作品はジ・インターナショナルな作品だ。
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