つかれぐま

ショーシャンクの空に 4Kデジタルリマスター版のつかれぐまのレビュー・感想・評価

4.5
23/10/6@イオン多摩❹
#午前十時の映画祭

【希望こそはすべて】

久々に息子からリクエスト☺
無実の罪(かどうか分からないのが本作の面白さ)で投獄された男が遭う地獄と希望。意外にもこの主人公アンディの内面は最後まで掘り下げられず、友人になった古参受刑者・レッド のモノローグで物語は進む。

妻殺しの真犯人が誰かはさておき、少なくとも不倫の原因になったのは妻の孤独だ。その責任は自分にあると反省したのか、アンディは獄中で他人に幸福を与えることに喜びを見出すようになる。友人にはビールや音楽を、刑務官には節税の手引きを、若者には知識を授け、まるでメシアのような救世主ぶりだ。

だが本作はそんな「信仰のすすめ」などではない。聖書にアレを隠したことがその象徴で、聖書も信仰も「したたかに」生きるための手段に過ぎず、生きる目的は「希望」なのだと体現してくれる。信仰が生きる目的になり、来世利益を夢見がちな福音派への皮肉。仮釈放後という「来世」が必ずとも幸せとは限らないとチクリ。

何度か見返す内に、本当の主人公はレッドに思えてくる。最後まで謎めいたアンディに感化されるレッド=我々観客の視点であり、アンディ=本作は我々が明日を生きるためのヒントをくれる。美しいラストシーンに至るまで「映画は観客のためのもの」というポリシーに貫かれているのが嬉しい。これが本作が多くの映画ファンに支持される一番の理由だろう。

アンディは無実か?ラストシーンは天国か?など多くの謎を残して終わるが、それらがさして重要ではない「どうでもよいこと」に思えてくる。人生は希望さえ失わなければ、他は皆「どうでもいい」些細な事。そんな後味を残す傑作。