腐り姫

デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリームの腐り姫のレビュー・感想・評価

-
圧倒的「は?」感。
デヴィッド・ボウイというアートの雑多なコラージュ。
正直私は置いてけぼり。全く世界観に入り込めず、とても残念だった。

これがボウイの展覧会であるならば、写真展であるならば、まだ納得できた。満足できたであろう。ただ映画として全く形成していないように感じたし、ただの長編の意味の分からないMVにしか思えなかった。

しかもボウイの断片的な部分のみを切り取っているところがかなり不満足に感じられた。インタビューの切り取りでは主に抽象的な発言をしている部分ばかり(どんなんかももう忘れたわ、宇宙がどうとか)を取り上げていたため、デヴィッド・ボウイをよく知らない人からしてみれば、(良く知らない人はそもそもこの映画を見ようとしないだろうが)何だか掴みどころのない、現実離れしたスターにしか映らないだろう。ボウイは音楽業界やこれからの社会についてなど、現実的な面にも恐れを知らず切り込んだ発言も多くあったはずだ。そのあたりの発言はほぼほぼ取り上げられていなかった。

またファンのインタビューも取り上げられていたが、ボウイのセクシーさばかりに着目した発言ばかりを取り上げていて、音楽に込められたメッセージ性について触れた発言など全くといっていいほど取り上げられていなかった。(ボウイの魅力はヴィジュアルだけか)そういったこともあってか、クイーンとの共作である名曲under pressureがこの映画には出てこない!考えられない!趣向があるのかもしれないが、この曲を取り上げないとは意味がわからん。(ボヘミアンラプソディーではフレディの悲しみが表現されていた名シーンに使用されていたのに!)

この映画を評価する人はよっぽどアートに対する感性が高い人だと思う。MVやらインタビューやらライブやらの切り貼りの連続に加えて、音源にSE重ねて、これがロックだ!これがボウイだ!と言わんばかりの監督の押し付け。いや圧しつけ。そこにアートを真正面から受け止められる人はよほどアートに対して度量が深い、繊細な感受性をお持ちやと私は思う。そうさ、これはアートであって、映画である必要性はない。展覧会で音楽流して、アートワークや写真飾っとけばいいレベル。レベル・レベル。

また映画全体的には70年代~90年代を順当にアルバムや名曲を取り上げていたけれども、2000年以降はほぼほぼ触れていない!The Next Dayのアートは一瞬出てきた気がする。いや、これも名盤だろ。ちゃんと取り上げろよ。そして晩年のコンサートを見せろよ。最後のコンサート映像を見せろよ。映画館で最後のコンサート映像を見せろよ。若くて元気のあったところばかりじゃなくて、最後に伝えたかったロックを、ボウイの音楽を見せろよ。

そうよ、期待していたライブ音源について。これがパフォーマンス映像含めまともに見られたのが4,5曲程度(体感)。さすがにHeroesやLet's danceはほぼほぼフルで聴かせてくれたけど、ほか何があったか…。もう覚えていない。

このアートを受け止めて涙流せる人は芸術の道目指せると思います。私は凡人なので無理です。シンプルにライブ音源やボウイの息遣いを感じたかった私は全く楽しめなかった。これは単にトレーラーの長編です。
腐り姫

腐り姫