瀬口航平

窓辺にての瀬口航平のネタバレレビュー・内容・結末

窓辺にて(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

不思議な映画だった。普段洋画のほうが観てるから、こういう作品に慣れないのかもしれないけど。
観た後の感覚がすーーごく良かった。心地よかった。今日は普通に仕事して、その後観に行ったんだけど、この映画のおかげで今日はとても良い日だったな、と思えた。いつもより一日を長く感じた。それだけこの映画の中の時間感覚に身を委ねていたんだと思う。
観た後の自分の観ている世界と映画の世界が地続きな感じがして、とても心地よかった。


長台詞がすごく多い。それが良かった。浮気してても、何も考えてなさそうに見えても、嫌な人物に見えても、どんな人間も悩んでるんだな、と思えた。長台詞って、悩んで、解決できないものを抱えてないと生まれない。

シチュエーションが面白い笑
最初は主人公のモデルに会いに行く、行きたい、ってなってたのに、いざ会うと、で?何?ってなって何話せばいいのかわからなくなるの何となくわかって面白い
稲垣吾郎のあのキャラクターで、エッチ?ってセリフは反則。笑ってしまった。未成年にラブホに誘われて行ってしまう市川。。彼の性格ゆえか、もう離婚するしいいか、みたいな投げやりな気持ちからかわからんけど、おれなら怖すぎるな。。

たくさんシーンあったけど、特別いいな、と思えたシーンは2つだけ。それ以外のシーンは、それなりに良いな、と思ったぐらいだけど、全体的な雰囲気が良かったから、思いの外おれの中での評価が高い。
良かった2つのシーンは、志田未来と稲垣吾郎のシーンと、稲垣吾郎と中村ゆりの別れ話のシーン。
特に別れ話のシーン良かった。
トーンを変えずに急に暴露し始めるのめっちゃキャラクターに合ってる。
そして、浮気をしていたことを知っていても、ショックを受けない自分にショックで悩んでること暴露して、それを奥さんが愛だと受け取ってるのがめちゃめちゃ素敵だった。

紗衣「それは誰のため?」

市川「自分のためだよ」

紗衣「わたしのためじゃん」

とか、

紗衣「役に立ってるじゃん」

は、彼に愛を感じてないと出てこないセリフ。。
そして多分初めて彼にこんなに愛を感じたんだと思う。。
それなのに別れるというところも面白い。。
あと、市川ってすんごく優しい人物なんだな、と思った。とびきり優しい
感情的になっている人物にではなく、淡々としている、一見ドライに思える人物に優しさを感じられるのが良い。


書くと過去になる、という台詞も面白い。すごい納得した。。不思議。。なんでだろ。。。

洋画って、何となくおれの中で見方が決まってて、あらゆる点で合理的に作られてるから、知的に紐解いていく感じがするんだけど、この今泉監督の映画は、曖昧で、未完成で、ほつれた糸をそのままにしたようなシーンが並んでいて、何となく紐解いていくのが難しい、その感じが現実とかなり近くて、でもそういうシーンの一つ一つが時間をかけて丁寧に紡がれてるから、ほつれていても、なんか暖かさを感じる。

正直さ、みたいなものも一つのテーマかも。
あなたはどうしたいの?というセリフが多い。人物が、こうしたほうがいいのかなあと悩んでるときに、投げかけられてたのが印象的だった。

三組とも結末は違ったけど、どの結末もみんな満足したもので、観た後の余韻が良かったのはそれもあると思う。
別れても、現状維持でも、くっついても、どうあっても幸せであれる、という終わり方のような感じがした。
瀬口航平

瀬口航平