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カラオケ行こ!のmのレビュー・感想・評価

カラオケ行こ!(2024年製作の映画)
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良作だと思う。無茶を捩じ伏せる綾野剛のオム・ファタールっぷりは余りにも最強で、齋藤潤のクライマックスでの熱唱は胸に来るものがしっかりあった。この2点だけでも実写化の意味は充分あったし、野木さんの脚色と山下監督の演出も的確で、青春の1ページの終わりと街の猥雑さの終わりの交差という映画としての骨格がしっかりと形作られている。そして野木さんらしいブロマンスな感覚も存分に漲っている。

その一方で、この物語が和山やま氏のチャーミングな絵柄を離れてリアルな肉体を得た結果、物語の根本的な部分=ヤクザと中学生の逢瀬というのがそもそもこれちょっとあかんやろというのが出てきてしまった感は自分の中で凄くあった。俺は藤井道人監督みたいにヤクザに甘い幻想を抱けないので・・だって北九州出身者だから・・それこそ劇中で言われる汚いもの否定なのではと思われるかもだけど、だってファンタジーにできない事ってあると思うんですよ。もちろん野木さんも山下監督もヤクザに甘ったるい幻想なんて抱いてはいなくて、例えば『ヤクザは下町の人達に優しくしてる』みたいなオッサンの砂糖菓子みたいなフィクションは作らずむしろ超えられない一線としての暴力と『こんな所来たらあかんよ』という大人から子供への言葉をきちんと用意している。それでもやはり実写という実像を得た事で、この物語のどうしてもちょっと成立しない危うさが原作より悪い意味で増してしまってはいる。難しいね。それでも本当に良い映画だと思うよ。

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