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GOのarchのレビュー・感想・評価

GO(2001年製作の映画)
4.3
この映画は何度も「恋愛映画」であることを主張する。
決して在日三世の苦境や、民族や国境という単位への疑念をテーマにした物語ではなく「俺」の物語だと主張するのだ。

そこには徹底された民族や血筋、国籍がまず焦点にあっていること自体に根本的な問題があるだろという姿勢が感じられる。実際国籍や血筋故の問題が窪塚演じる主人公の物語を駆動する訳だが、それでもこれは単なる不変的な「俺の恋愛」についての物語だと主張することが、本作の最もやりたいメッセージなのだ。
(そこに即して本作で描かれた社会問題を無視することは許されないが)

本作には常に激情が行動として表出する場面が多々あり、そこが何よりも白眉。『GANTZ』の既視感が強い冒頭のチキンレース、バスケシーンでの暴力騒動等など、感情がそのまま動きになっていくその力強さが魅力。窪塚もそうだが山本太郎も印象深い。なんだあの「顔」力、本当に凄まじい。

過去と現在をクロスカットしていたり、いつの間にか同一画面で展開したり、色々な飛躍があって手数の多さも特徴。テンポを作り出す編集感の中で不意に現実を突きつけられる描写(ジョンイルの死亡シーンとか)に直面するので、かなりキツい部分もあった。

個人的にはあの椿の父の下りが印象深い。海外に行って"日本人"を意識した彼は「日本人なんて恥ずかしい」みたいなことを言う。しかしながら日本人以外のアジア系への偏見があり、娘には「付き合うな」と教育していたりする。(娘も日本人らしい椿という名前を嫌がっていたり)
嫌がっていながら結局どこまでも"日本"の"日本人"である。そのことが非常にことの本質である「〇〇人という特性の透明さ、逃れられなさ」を指摘するようであった。


父親との殴り合いコミュニケーションとか柴咲コウの女性像とか、まぁ時代故の嫌さも目立ちつつ、この頃の邦画独特のエネルギーにひたすら魅了される映画体験だった。
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