昨日観た作品で主役だったフィリップ・ノワレつながりで鑑賞。「ニュー・シネマ・パラダイス」のアルフレード役でお馴染みですが、ちょっと冴えない感じがいいんです。
1944年、ドイツ占領下のフランスで、愛する家族をドイツ軍に殺されてしまった外科医ジュリアンがたった一人で敵と立ち向かう復讐劇。
タランティーノ作品の元ネタになっているとのことですが、シンプルがゆえに残酷さとパワーを感じる秀逸な復讐劇でした。
冒頭、家族で自転車を漕ぐ幸せの描写から一転する、のちの惨劇。
いかにも善良そうな中年太りで、人の命を救う外科医のジュリアンが復讐の鬼と化すギャップ。
キリスト像をぶち壊すジュリアンの「戦争の前に神など存在しない」という怒り。
怒りに火を点けるよう繰り返し挟まれる、家族との甘美な追想シーン。
地の利を活かし、重そうな体で古城の中を動き回るジュリアンの巧みさから目が離せない。
どうやったら観客に怒りが伝わるかに心血を注いだかのような演出。
ムダのないカット、少ない説明ですべてをわからせてくれる面白さ。
何よりも、妻役のロミー・シュナイダーの美しさが幸福の象徴として不可欠でした。
原題は「Le vieux fusil=古い銃」。傑作です。