真一

ウクライナから平和を叫ぶ Peace to You Allの真一のレビュー・感想・評価

3.7
あるべき戦争ジャーナリズムとは
交戦中の両軍の主張を中立的に
報じることでは、決してない。

あるべき戦争ジャーナリズムとは
戦火の中で倒れ、苦しむ民の声を
ありのままに伝え、平和の意味を
世界に問うことだー。

本作品に込められたメッセージは
この点に尽きると感じた。

カメラは、二つの叫びをとらえた。

一つは「自分を苦しめる敵を
やっつけてほしい」という叫びだ。
親ロシア派住民からも
ウクライナ住民からも
それぞれの立場から上がった。

だが、それ以上に切実なのは
二つ目の訴えだった。

それは
「愛する人が死んだ」
「もう戦争はたくさんだ」
という、慟哭の叫びだ。

中でも、親ロシア派支配地域に
住む炭鉱作業員の男性の言葉が
胸に響いた。

「俺が戦わないのは怖いからじゃない」
「神を、聖書を信じているんだ」
「隣人を殺してはならない」
「戦争は嫌だ。俺は平和主義者だ」

ウクライナの兵士の言葉も刺さった。
「僕らは歴史を学ばなかった」
「だから愚かな戦争を繰り返す」
「いつか敵と仲直りしたい」

撮影当時から8年が経過した今、
ウクライナ危機はロシア軍の侵攻で
最悪の局面に陥った。
だが、いかなる形で終結させるにせよ、
事態打開に必要なのが、
反戦、赦し、平和を愛する心である
実情に変わりはないだろう。
泥沼の戦闘の先にあるのは、地獄だ。

アジアに住む私たちも他人事ではない。
日米と中国が互いに敵視し
軍拡競争をエスカレートさせれば、
悲惨な戦争に発展しかねない。
日米同盟と中国軍が招く戦火の下で
死ぬのは、双方の若い兵士と、
私たち一般市民だ。

日本、米国、中国、北朝鮮の
愚かな政府を、
「軍拡NO」
「戦争NO」
の国際世論で包囲し、平和への
流れをつくる必要性が今ほど
求められる時はないと思う。

本作品を見て、こう感じた。

ウクライナの現地取材に
奔走した、隣国スロバキア出身の
ユライ・ムラヴェツ監督
を心からリスペクトします。
真一

真一