柊

灼熱の魂 デジタル・リマスター版の柊のレビュー・感想・評価

4.0
2010年製作らしいが,12年前私何してたかな?この作品まるで記憶に無い。
デジタルリマスター版で,再上映が何故今なのか?意図はよくわからないけど、カリテ一館でしか上映してなくてそんなに大々的な企画ではないのかな?

でもまぁ何と言うか見終わった人々が出口に向かう後ろ姿がみんな何か引き摺っているみたいに重たそうに見えた。それだけヘビーな作品です。
でもちょっとこれだけの作品作れる監督なのに,それ以降に監督した作品が「DUEN」なのか?何か腑に落ちないけどま,いっか。

地名がたくさん出てくるんだけど,どこも聞いたことない地名で、あれ?これって架空の国なのか?それとも私が無知なだけなのか?と思っていたけど、途中でテルアビブって言っていたから,この国の舞台は架空の中東ではなくてイスラエルでいいのか?未だに確信が持てないけど…それにしても知らない地名が多かった。後でHP見たらやっぱり国は特定してないとの事。それでも中東のどこかの国という事らしい。まぁそれだけでも充分かもしれない。中東のどこかの国では世界にそれ程知られていない小さな村が謂れなき暴力に晒されて名もなき人々が何の理由もなく命を奪われている日常があるんだと言う事には変わりない。情報として知り得ない世界の理不尽な不幸せは数知れないと言う事だ。

ナワルの人生が1949-2009年の設定。たった60年余りの人生でありながらその過酷さは凄惨を極める。
ストーリー的には双子が刑務所で生まれた子を探している兄と思い込んでいるが,見ているこちらは最初のシーンがあるので、そこで生まれるのはあなた方で、兄は別とわかっている。終盤探していた兄と双子の父親の関係が薄々観ていると気がつく。でも作中にもあったけど知りたくないと私も思ったし、私の憶測が間違いであればそれで良いと思ってしまったくらい救いようがない展開。踵のタトゥーはいずれ本人を特定する鍵になる事は初めからわかっていたけど、あのプールサイドで巡り合うのはキツすぎるわ。
元々宗教の違いが根底にあり、それ故の戦闘状態
。宗教の違いが難民の虐殺に繋がるなど,日本人には理解し難いが、その確執は今もあまり変わらない。ナワルが暗殺した相手もその動悸もよくわからず、あれよあれよと言う間に実行に至るけど、ちょっと私には分かりにくい。そうでなくてもこの国のいざこざは分かりにくい。

結局、ナワルを釈放させてアメリカに双子と共に移住の手配をしたのは何の組織なのか?ナワルの18年間の雇い主も事情を知ってそうだし、拷問人も国外脱出している事を考えると私になど理解し難いバックボーンがあるのだろう。

それにしても誰もが望んでいないパズルがはまっていく過程は何とも言えない。そしてそれを唯一気がつく存在であったのが,ナワルとは。可哀想過ぎて言葉も出ない。
これが見終わった後のみんなの暗い重い背中の正体だ。
2通の手紙をもらった彼は今後どうするのか?

まぁナワルの年齢とその子ども達の年齢がちょっと違和感があるんだけど…それはどうなんだろう?
バスの虐殺放火シーンがちょっとショッキング過ぎる。
柊