しの

クレイジークルーズのしののレビュー・感想・評価

クレイジークルーズ(2023年製作の映画)
1.0
何から何まで酷くて本当に酷かった。酷い以外の語彙を失う酷さ。坂元裕二どうしたんだ。ヤケクソ脚本にもほどがある。

まず豪華客船という舞台が映像的にも物語的にも全く活きておらず、むしろ安っぽく見えてしまうのがNetflix資本の無駄遣い感半端なくて、色んな意味で見るに耐えなかった。途中、プールに落ちて会話するシーンがあるのだが、手持ち無沙汰の何となく演出でやっているのが露骨すぎる。この時点でまず直視し続けるのがキツい。

物語としては、一応殺人事件が起こるミステリーなのだが、主軸はラブコメになっている。それはそれで良いが、だからといって犯行現場でいちゃつき、潜入していちゃつき、しまいには事件そっちのけで遊びまくってるのは何なんだ。分かりやすく破綻しているし、作品の体を成していないと思う。ミステリーらしく群像劇っぽいキャスト配置にはなっているが、これも全く機能していなくて斬新ですらあった。一応、目撃者たちは殺人事件があったことを明かしたいのか明かしたくないのかで揉めるのだが、ここのスタンスが意味不明だし終盤ではスタンスの一貫性すら崩壊していてもう無茶苦茶。

犯人の行き当たり感やら真犯人のベラベラ自白とか、ミステリーとしてとにかくお粗末なのは前提として、なによりそれを踏み台に語られるロマンスが非常に軽薄なのがどうかと思った。恋愛ごっこにかまけてバトラーとして最低限の振る舞いすらできてないのにクレーマーを批判するのか……とか。唯一、トイレットペーパーを用いたある演出は面白かったが、単に斬新な画になってるだけでとくに意味はないし、むしろこの「君たちの恋愛ごっこに巻き込むなよ」感が助長されるもので、ここも何ら加点要素にならない。何考えて作ったんだろうか。

そもそも薄寒い台詞と演技の時点で自分は全くノれなかったのだが、それでも殺人ミステリーを舞台にした一種のナンセンスロマコメとして割り切れば面白かったのだろう。しかし、お出しされたのは上記のように適当な撮影・演出、構造レベルの破綻、軽薄な話運びだけだった。Netflix資本×坂元裕二脚本という座組による期待値との落差を含め、自分がここ数年観たなかで一番酷い映画だった。
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