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シング・フォー・ミー、ライルのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

4.0
想定外にめちゃよかった!しゃべるクマ in ロンドンの「パディントン」がイケるなら、歌うワニ in NYはどうよ?歌はショーン・メンデス、作曲は「グレイテスト・ショーマン」「ディア・エヴァン・ハンセン」のベンジ・パセック&ジャスティン・ポールで送るミュージカル映画で、お子様連れにぜひお勧めしたい王道のファミリー作品です。

ペットショップで歌っているところをショーマンのヘクター(ハビエル・バルデム)に見初められ、舞台に立ったワニのライル(ショーン・メンデス)ですが、聴衆を前にすると固まってしまい歌えません。ヘクターが出ていきアパートの屋根裏部屋でひっそりと暮らしているライルの階下にプリム一家が引っ越してきます。新しい学校で友達が作れない社会不安症のジョシュは、密かに夜な夜なライルと心を通わせるようになり...

新しさは何もなく単純かつベタベタのストーリーで王道のど真ん中を行っています。だからこそ何を提示したいのか模索するような迷いが一切なくパワフルで、我ながら驚くほど心を動かされました。ニューヨークのロケーションの活かし方も既視感バリバリだけど、やっぱり何度使い回されてもいいなぁと思います。

雰囲気や展開は、ほぼ「パディントン」。同作では映画のパロディが多数出てきましたが、こちらはNYが舞台なのでミュージカルのネタがぎっしり。特に設定は音楽担当に合わせて「グレイテスト・ショーマン」「ディア・エヴァン・ハンセン」の影響が圧倒的に目立ちますが、それ以外にも「アニー」「オペラ座の怪人」「キャッツ」など様々なミュージカルの小ネタがちりばめられていて楽しい。

唯一ケチをつけるとすれば、音楽が少し弱いかなあ。「ディア・エヴァン・ハンセン」の"Sincerely Me", "For Forever", "If I Could Tell Her", "Anybody Have a Map"などを適当に組み合わせて短時間でサクッと作りました感があり、映画全体にみられるパワーが歌には感じられない。オリジナル曲以外ではスティーヴィー・ワンダーがあったりしますが、劇場のキッズの皆様が一番ノリノリになっていたのは終盤に出てくるエルトン・ジョンの曲です。曲名は言わなくてもわかりますよね(笑)。

2歳の時に母を亡くし不安や孤独を抱えるジョシュに、彼の成長とともに自分が必要とされなくなったと感じる元料理研究家の継母(コンスタンス・ウー)、若き日の情熱を忘れたちょっと頼りない私学の教師のパパ(スクート・マクネイリー)。誰もが憧れる一等地に引っ越してきたけど(家計収支がKK並みに謎なのは置いといてw)、どこかその生活に物足りなさを感じる一家に歌で笑顔を与えたライル。そんな彼自身も、ステージでは歌が歌えず見放された存在です。エンタメの街ニューヨークで、ライルが最後に出した答えは...

「パディントン」は大人単独でも普通に楽しめる作品ですが、本作はがっつりキッズ向けでしょうか。いや、そんなこと言わずに思いっきり童心に帰って大人も楽しみましょう!今週は3連休なので、カンヌのパルム・ドール受賞の「Triangle of Sadness」、デヴィッド・O・ラッセル監督久々の新作「アムステルダム」と注目作の公開が重なりましたが、個人的には本作が一番純粋に楽しめましたよ。

予告編:https://youtu.be/s0W6O7mSlaU
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