chunkymonkey

17歳の処方箋のchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

17歳の処方箋(2002年製作の映画)
3.0
アカデミー賞での健闘+「パディントン2」の脚本家による盗作主張が話題を呼んだ「ザ・ホールドオーバーズ」は、高校生の男の子の設定が本作と類似しているとの指摘が散見されたので観てみることに。裕福だが愛のない両親を持つ自堕落な高校生の逃避行が描かれます。う~ん、皆様書かれているように、これはよくわからない(笑)。

もちろんその「よくわからない」が意図的なのはよくわかる。お前は世の中をわかってないからとああしろこうしろと指図・誘導する欠点だらけの大人たちに対し、自分のほうがよっぽどわかっているんだといわんばかりに反発する主人公こそ、実際のところ裕福で何一つ不自由ない世間しらずで何も「わかっていない・みえていない」若者だというのを、映画に出てくる人物やエピソードが「よくわからない・実態がみえない」ことで表現しています。まあでも、意図的としても観客の立場からは極めてフラストレーションが溜まる鑑賞体験です。

まずは、ジャンルがわからない。オープニングは主人公とその兄が母親を殺害するシーン。ところが、それを包むのは、おとぼけなコメディ色全開の劇伴。一体、自分はこれからどういう映画を観るんだろうかとものすごく困惑します。最初の数十分は確かに少し笑えるシーンがあるものの、その後は笑える要素は皆無...

次に時間経過がわからない。一応、夏の始まりから年末あたりの半年間っぽい?主人公の服装がいつも似たようなプレッピースタイルだし、季節を感じさせるものもないし、会話はもっと時間が経っているかのように行われる。

家族や新たに知り合う人々のことも結局よくわからない。おそらく観客を驚かすために、主人公の家族関係や彼が家族にあだ名呼びされる本当の事情、その他レイチェルやラッセルなどの登場人物の正体(まさかの"ドラッグ"の言葉遊び?)などを、何のヒントもなしにできるだけ映画の後ろの方でポンっと出してくるので、後から「これってこういうことだったの?」と思い返すも、そこがつながるような「間」が抜けていてものすごく消化不良な感じが残る。

ストーリーや人物を理解することが目的な映画なのではなく、世間知らずで不安定な高校生の「心象風景」を描いた作品として観られるかどうかで評価は大きく変わるのだと思います。といわけで、これを鑑賞すると自分が映画鑑賞で何を重視しているのかがわかるかもしれません😊
chunkymonkey

chunkymonkey