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アイアンクローのchunkymonkeyのレビュー・感想・評価

アイアンクロー(2023年製作の映画)
4.0
1980年代に活躍したプロレス一家"フォン・エリック5兄弟"の悲劇を描いた伝記映画。驚くほどドラマチックな実在の一家の物語を通してアメリカの白人社会に根付く家父長制の闇と兄弟愛の尊さを描いた意欲作で、ステロイド漬けでパンパンになった身体(と顔)とは裏腹に繊細に主人公の感情を表現したザック・エフロンはもちろん、その脇を固めた今が旬の若い俳優陣の演技も見どころです。映画館で予告編を見たときには、兄弟の栄光と挫折を描いたスポ根映画かなと思ったけど、全然違って悲しくずっしりくる作品だった...

アメフト選手の夢を叶えられずレスリングの道に進み活躍するもワールド・チャンピオンになる機会に恵まれなかったフリッツ・フォン・エリック。やがて5人の男の子を持った彼は、子供たちに自分が欲しかった夢と金、名声を託します。真面目で力のあるケヴィン(ザック・エフロン)、スター性抜群のデイヴィット(ハリス・ディキンソン)、要領のよい陸上選手のケリー(ジェレミー・アレン・ホワイト)、そしてスポーツよりも音楽を愛するマイク(スタンリー・シモンズ)。父親によってライバル関係に仕立て上げられるも、決して喧嘩することなく互いに温かい言葉を掛け合うこの兄弟たちの運命は...

レスリングのことは全く知らないので、こんな一家が実在したなんてびっくり!父と母、そして兄弟たち、あまりにこの一家一人一人の存在がとても興味深いので、もっと深く彼らの人生や思いを知りたい思う。だけど、フォーカスすべき人数が多いためか、上述のこの映画が言いたいメッセージに焦点を絞るために単純化しすぎたか、描かれる彼らの人生はとても複雑で重いのにえっらい表面的にサクサク進んじゃうなと少し物足りなさを感じました。

家父長制の深い闇と、それにとって代わられるべき兄弟愛の尊さ。メッセージが明確に定まっているので、全体的にまとめ方がとてもすっきりキレイで、映像や編集などすべてがセンスよく調和していてよかった。わざとらしく感じて白ける方もいるかもしれませんが、兄弟愛の美しさをこれでもかと見せつけるラストの一連のシーンは思わず涙しちゃいます🥲おススメです。
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