岩嵜修平

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3.7
同じTokyo New Cinemaの中川龍太郎作品に似たテーマと思ったら、原案か。個人主義の流れは止められず、銭湯など昔ながらの共同体(ときに人)は失われていくが、それでも残したいものを映す。中川監督の"エモさ"(それが好き)に比べると、シビアなラストも素晴らしい。

タイトル通り、主人公だけでなく、きょうだい全員、そして、彼女たちの周囲の誰しもが自分が見ている世界しか見えていない。他者の気持ちなんて想像するしかない。そしてネットが前提となり、想像しなければいけない他者との関わりが増え過ぎた結果、想像を諦めるか生きる世界を小さくするかの2択に。

国分寺という、比較的、都会にも関わらず、家を継いで農業に従事する20代女性の描写が象徴的。生きる世界は小さいかもしれないが、作中では、最も現実を見れているように映される。主人公も、仕事は出来るのかもしれないが1人で出来ることには限界がある。オープニングと接続するラストの余白に鳥肌。

森田想(『放課後ソーダ日和』!)をはじめとして、中村映里子、中崎敏、熊野善啓、松浦祐也、川瀬陽太、カトウシンスケ、堀春菜、三村和敬、新谷ゆづみと他作品でも印象に残ってきた絶妙なキャスティングをみんな魅力的に見せる佐近圭太郎監督の手腕は間違いないのでドラマも含めて今後、期待したい。
岩嵜修平

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