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マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺のbennoのレビュー・感想・評価

3.8
映画史に残るタイトルの長さ…!!

既にタイトルがストーリー説明になっていますს

原作はドイツ人作家ペーター・ヴァイスの戯曲…《蝿の王》で有名な英国の鬼才ピーター・ブルック監督が緊張と解放の凄まじい映像で魅せます。



19世紀の初頭…フランスのシャラントン精神病院が舞台。

当時は治療の一環として患者達による演劇が特権階級のセレブ達に披露され流行していたようです…場所は病院内の大浴場…鉄格子を挟み観客が演技を見つめます…。

1803年から生涯を終えるまでそこの患者だった作家のマルキ・ド・サド…彼による台本で演出された実際の演目を原作の舞台と同じくロイヤル・シェイクスピア・カンパニーが圧倒的な革命歌劇として演じ、ピーターが映画化したメタ作品。

題材はタイトルにもあるように…ナポレオン以前のフランス革命ジャコバン派の指導者…ジャン=ポール・マレーが敵対する穏健派の女闘士シャルロット・コルデーにより暗殺された事実に基づく演劇…そこにサド役も出演します(この部分はフィクション)。

急進的で過激派のマラー…当時の恐怖政治を行う一方で、国民統合の為にも様々な政策を行ってきた男…。

Was he the people’s friend or freedom’s enemy??

やる気満々な心寂しい革命家マラーとインテリで人間嫌いの世捨て人サドが同じ時代を共有し対話する可笑しみ…劇中眠っている患者や突然襲い出す色情狂…看守に止められたり、収拾がつかなくなって中断も度々…とても異様な風景ですが、その緩急も面白みに代わり何故か惹きつけられます…。

ひと際目を引くのはボーカリストの4人組…ククルク、ポルポ、ココ、ロシニョール…サーカスの道化師のようなメイクアップで随所に歌を披露…狂騒の中のひと休み( ´͈ ᵕ `͈ )❤︎ほっ…。

彼らの異様な演劇…高見の見物をするセレブ…更には現代の我々がそれを覗き見る…なんともシニカル極まりない滑稽な構図。

ラストは凄まじい混乱と狂奔…カオスです!!

決して政治色の強い作品ではありません…難しい精神病患者の役を見事に演じ切った俳優、そして流石のロイヤル・シェイクスピア・カンパニーは素晴らしかったです…。



✎︎ 皮膚病を患っていたマラーは療養の為バスタブにいることが多く…そこで暗殺されました…。


ジャック=ルイ・ダヴィッド《マラーの死》

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