みほみほ

SHE SAID/シー・セッド その名を暴けのみほみほのレビュー・感想・評価

4.0
🍷2023年194本目🍷

世の中には 人を貶めてお金を稼いだり、出世の為に大物と寝たりする女もいれば、権力を利用しねじ伏せ、裸の王様であり続ける男もいる。

そういった微妙なラインを悪用して、ここまで会社ごと自分の思惑通りに動かせる権力が存在したなんて信じたくもない。あまりに好き放題してるもんだから、思わず笑ってしまうくらい驚いた。

中盤に出てくる音声だけのシーンが生々しくて、それまでの証言や記者から受け取っていたイメージから一転、一気に現実のおぞましい光景が浮かんできて 自分の事のように苦しかった。

はっきりNOが言える言えないの問題ではなく、その後のキャリアを潰される事を思うと、恐怖に支配されながら無力な自分に一体何が出来るというのか。

激高するワインスタインも気持ち悪かったし、周りを取り巻き彼を守る仕事仲間も異様だった。

ワインスタインが一部の人間から女遊びと誤解されていたように、本当に絶妙なところを突いて悪い女と混同させる事で虚偽と周囲に思い込ませる悪どさと、あそこまでの図々しさに同じ人間として言葉がない。あれはもはや癖が悪過ぎる病気なのではないか…そうとでも考えないと思考回路が理解出来ない。

記者といっても映画では見えてこない色々なやり方があると思うので、手放しに感情移入して応援することは出来なかったけど、巨悪に挑んでいく女性2人が普通に育児をしながら電話の向こうではおぞましい世界と闘っているというのはグッとくる部分があった。

冒頭で少しトランプの件が差し込まれていたけど、女性スキャンダルくらいでブレる権力じゃないんだと言われたようで悲しかった。

痴漢冤罪とか虚偽の告発とかもあるから何を信じたら良いのか難しい部分もあるけど、これだけの大物をムショにまで送ったのだから素晴らしい。

ある時映画を観ていて、 ロゴを見た瞬間に この制作会社は名作が多いから割と好きだな〜と言った時に夫からチラッと話は聞いていて、その時は無知だったのでMIRAMAXが無くなったのは悲しいなと漠然と感じていたけど、こういう事が起きていたことを知り、複雑に絡まりあって成り立っていた悪事だったことにさらなるショックを受けました。

実在名がポンポン出てくるので、スコセッシはワインスタインのこと嫌ってるんだ〜とか ディズニーとも接点のあった会社の大物プロデューサーだったんだとか自分が無知で知らなかった事ばかりで驚いた。映画好きでも向こうのニュースを細かく追ったり、映画祭に興味がある人間ではないので漠然としか知らなかった。

今日本中で突如として話題になり始めた問題(昔から噂はあったし裁判の事も知ってたのにどこかで嘘でしょ〜と思ってた自分がいた)とも重なり、なんとなく噂は聞きつつも実際ありましたと認めるまでにかかる時間や、組織の複雑さが見えてきて 悪事を働く権力者が守られる現状を悲しく思いました。

改めて時代が変わった事を感じたし、世界中の悪どい連鎖の膿を潰し尽くして、 普通に働く事を奪うことのない風通しの良さが実現すればいいのにと思った。そして日本はまだまだその瞬間に到達するには遠いことを痛感した。
みほみほ

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