金春ハリネズミ

ペパーミント・キャンディー 4Kレストアの金春ハリネズミのレビュー・感想・評価

4.0
本作はどうしたって、イチャンドン監督の次作「oasis」と連動して語られることが多い気がする。
それは仕方のないことだとしても、本作はあくまで本作単体で考えるべきだと、思ってしまう。

イチャンドンがここまで韓国の史実に則って作品を作ったのは、後にも先にもこれっきりでしょうか。

作品単体で見るなら、正直ピンとこなかったんです。
モチーフの際立たせ方も、メッセージの立ち方も、ちょっと物足りなかった。主人公ヨンホのイカれっぷりが、(イチャンドン作品では有りがちなモチーフだとしても)良くも悪くも強力過ぎて、単にイっちゃってる奴にしか見えない。

ヨンホ自身に韓国という国そのものを投影させたのだとすれば、彼の人生を狂わせたトリガーとなるのはやはり終盤の時代。

兵役によって大切なものが欠落したというくだりなら、別作にはなるがアメリカ映画「ランボー」の方が十分にその傷がこちらにも伝わる。

彼があそこまで自身の過去や、周囲の人を大切にできないのは、単に兵役だけのせいではなく、彼自身の根本的な"何か"によるものだと思えて仕方がない。
それほどにヨンホという男は奇怪で危険な男に映った。
それが作品全体のリズムに、僕にとっては悪い意味で作用していたように見えて、どうも釈然としない。

本作のグルーヴ感に対して、ヨンホに余りある"何か"を背負わせ過ぎているようにしか見えない。
この"何か"が、僕にはよくわからなかった。