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Pearl パールのyookiecoのネタバレレビュー・内容・結末

Pearl パール(2022年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

【2023年のベスト・エンディング賞暫定1位】

2022年に公開された、タイ・ウェスト監督、ミア・ゴス主演のホラー「エックス」シリーズの2作目。1970年代が舞台の1作目「エックス」に登場した殺人鬼老婆パールの若き日を描き、夢見る少女がいかにしてシリアルキラーへと変貌したかが明かされる前日譚。

1作目のエックスがかなり面白かったので期待して観に行ったら、その期待を超えてくる面白さだった。やはりA24製作のホラー映画は裏切らない。「映画史上、もっとも無垢なシリアルキラー誕生」というキャッチコピーもいいじゃない!

去年公開の「エックス」、今年公開の「パール」と、期間を開けずに公開してくれたことが非常にありがたく、公開から2ー3年も経てば易々と内容を忘れてしまう記憶力に乏しい私のような人間でも、1作目のパール老婆の行動原理が随所に散らばめられていることに気づき、それらを見つけてはつい笑みを浮かべてしまっていた。親に秘密で家を抜け出すために2階の屋根から外に出ることを繰り返していた若きパールを見れば、老婆が若者を襲う時ために屋根から狙いに行っていたシーンを思い出す。映写技師の彼に誘われ映写室の小さな窓から違法ポルノ映画を覗くパールの姿には、セックスシーンを撮影している若者たちの様子を窓の外から凝視している老婆の顔がフラッシュバックする。あのワニちゃんも続投。まさか父親も食べさそうとしていたとはね。

両親、映写技師の彼、義理の妹を次々と殺し、血で染めたような真っ赤なワンピースに身を包んだパール。スクリーンの中で残酷なスターとなってしまった彼女がとても可哀そうだった。片田舎に生まれ、毒親と暮らし、そこから出ることのできないパールの不満と恐怖にはシンパシーを感じてしまう。今、朝ドラ「あまちゃん」の再放送を観ているが、行くとこまで行っちゃったユイちゃんだ。生まれた時代・場所・性別によって、とんでもない居場所に雁字搦めにされた人間は、死にたくなるか殺したくなるかのどちらかになってもおかしくない。

前作「Xエックス」で主人公マキシーンとパールの2役を演じ、今作でもパールとして主演したミア・ゴスの怪演が素晴らしく、義理の妹への告白シーンの長台詞の衝撃、そしてラスト5分間の快感と悲憤に満ちた笑顔は凄まじかった。2023年のベスト・エンディング賞暫定1位だ。本作では脚本も担当したらしく、今後がとても楽しみな俳優である。3作目の「マキシーン」も期待大!
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