yookieco

哀れなるものたちのyookiecoのレビュー・感想・評価

哀れなるものたち(2023年製作の映画)
4.1
【彼女が選択した自由とその解決策とは…】

いつも注目していながら見逃していたヨルゴス・ランティモス監督作品をついに劇場で鑑賞。自ら命を絶った若き妊婦。その遺体から取り上げた胎児の脳を移植することで蘇生された彼女が、ベラと名付けられ身体は大人・脳は赤ちゃん状態から人生を送る冒険物語。彼女を所有物かのように扱う男たちに連れ回されるうち、快楽と苦痛を経験し、世界を知ることで、女性である自分が「選択権を得る」ことが男たち、ひいては世の中の「進化」に繋がると確信する。最初に彼女を連れ出すプレイボーイ・ダンカンは、彼女に“良識的な振舞い”を強いろうとする。その特異な出自から、常識を覆し奔放に行動する彼女は、ダンカンを苦しめる。更には、行く先々で触れ合う人々の言動を少しだけ「社会の良識」から解放してみせるのだ。しかし彼女が手に入れた自由な生活とその実現方法に判然とはしない。旅の途中で出会った黒人青年の「人間も動物も元来は狂暴な生き物であり、理想は裏切られるんだ」という言葉が、思い起こされる結末だった。性描写と手術シーンが多くR18指定だが、ゴシックファンタジーの世界観に魅了され、役者陣の怪演に虜になる傑作。
yookieco

yookieco