シミステツ

Pearl パールのシミステツのネタバレレビュー・内容・結末

Pearl パール(2022年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

60年代ミュージカルにも似たポップな演技・演出・キャラクターがシリアルキラーとの距離感を生んで不気味さを倍増させている。

生きるか死ぬかの生活に厳格な母、身体が不自由な父。「思い通りにならないのが人生」という母の言葉。映画、ヨーロッパへの憧れ。自由への渇望、抑圧からの解放。

カカシとのダンス、騎乗位が狂気だったし、父親を池に落としてワニに喰わせようとするシーンもヒリヒリした。自分への見られ方や期待が思惑通りでないとめちゃくちゃに激昂して殺人を犯す。モンスターすぎる言動は育った環境に依拠するし、身体が不自由な父親という男性性の不在、すべてを司る母親の絶対的存在、その憧れと憎悪が彼女のルサンチマンを増幅させ破壊衝動を駆り立てるのだろう。

冒頭でアヒルを殺したりと前半はジリジリと怖さはあったけど、後半の狂気側の畳みかけをもっと重厚に見たかった印象はある。戦場をバックに道化にも似た女性兵士をバックダンサーに踊るオーディションは恐怖。

不合格を突きつけられたパール。誰かのコピー、量産ではなく、ほしいのは未知の才能というのが彼女という人間形成そのものを表しているよう。ルサンチマンや環境のような、それとして独立したものではない依存的、相関的で純粋に内側から溢れ出たオリジナルではないというか。それでいて世の中の人とくらべて何かが「欠けている」という相反するものもあり。
ミア・ゴスの演技めちゃくちゃ怖かった。最後ハワードが帰ってきてからのエンドロールで続く表情は圧巻。