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ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのkのレビュー・感想・評価

5.0
この映画を観てイラついたり怒ったりしてしまう人はつまり、自分の向き合いたくない部分を突きつけられてしまったり、あるいは傷だらけでも泣けなくて自分なりに頑張ってきたことを手放す怖さがあるってことなんだと思う。
登場人物は誰もあなたのような人間には話しかけていない。あなたが話したいと思っているだけ。とでも言わんばかりにぬいぐるみがこちらを静かに見つめている。

麦戸ちゃんが一番まともな人間だと私は思う。

そしてこの映画を観て確信したのは、日本の映画業界には弱くて優しい人間の表象が足りてなさすぎるということ。強い人間を見ることより弱い人間を知ることの方が励まされる。"強く"ないと生き残れない業界の体質から変えないと、弱くて優しい人間は描けないと思う。

麦戸ちゃんが「夜の散歩は好きだけど夜道を歩くのが怖くて悔しい」みたいなことを言っていて、これほど"自分の思いを代弁している"と感じたことはないと、苦しすぎて涙がでるみたいな状態になりながらも、監督ありがとねと念を送りながら泣いた。

この映画に5点の評価をつけたいと思った自分を誇りに思おう。
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