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ぬいぐるみとしゃべる人はやさしいのらのレビュー・感想・評価

2.0
正直かなりきつかった。最後まで観ても「七森や麦戸と同じ"ぬいぐるみとしゃべる"タイプの人が観て慰めを得る(傷を舐め合う)ための映画」という印象が拭えなくて、それ以上の豊かさや価値を見出すことができなかった。作者側の意図としては、彼/彼女らが「正しい」わけでも「正しくない」わけでもないという描き方をしたかったのかもしれないが、作品全体からどうしても偏った意識が透けて見えてきてしまう。どうにも嫌な感じのルサンチマンの発露や選民意識のようなものすら感じてしまうのは、優しくなさすぎるからだろうか。

"ぬいぐるみとしゃべらない"サークル員である白城というキャラクターを通してもっと複雑なところまで描きたかったのかもしれないが、その試みもうまくいっていないように感じる。結局は、"ぬいぐるみとしゃべる"人にとって作品上都合のよいだけの登場人物に見え、ラストの独白によってその印象はより強まった。

自分にとって優れた芸術作品とは、意識を"揺さぶる"ものであって、似た者同士が同じような問題意識を共有・反復して安心感を得るようなものではない。自分自身この映画の登場人物たちとは重なる部分が多いと思っているが、それゆえに強い心理的抵抗を覚える。「わからない」のではなく「わかる」部分が多すぎるのだ。それから、個性的なキャラクターが何人か登場するのに全然群像劇的に回っていないのももったいないと感じた。メッセージと問題意識はあっても、より複雑な領域に踏み込み得るはずのドラマがない。
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