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美と殺戮のすべてのおっとっとのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
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非常に恥ずかしながらナン・ゴールディンを存じ上げなかったが、彼女のキャリアとサックラー家がもたらした「オピオイド依存症」の被害、その告発までを、絶妙なバランスで描き切った意欲作。

オスカー受賞は間違いないであろうと感じるのは、アメリカ人が大好きな「勧善懲悪」に映画自体の締めとしては十分すぎるほどの「勝利」を収めている点。

ゴールディンがいなければ、ここまで彼ら「P.A.I.N」の活動が注目されることはなかったのであろうとことは察せられるが、彼女自身がそれを一番わかっているように思える。「私の名前を使って、”サックラー”の名前が一つでも美術館から消えるのであれば、使ってやろうじゃないか」とでも言わんばかりの。

そして夥しい量のコレクションを保有する美術館をただ同然で、楽しんでいる我々こそ、「なぜ美術館はこのような経営で成り立っているのか」ということを改めて考えるべきなのではないのか。

“美術館”にある彼らの名前はあくまで一つの象徴であり、彼らの活動がそれ自体でないのを念のため。
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