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美と殺戮のすべてのarchのレビュー・感想・評価

美と殺戮のすべて(2022年製作の映画)
5.0
大傑作。ナン・ゴールディンのアクティビストとしての一面を彼女のバックボーンや姉の人生からの影響を背景にすることで、芸術と人生と政治的なことを一本見事に筋の通った物語にして見せた。(勿論それらは元々深い関係にある訳だが)

写真家としての側面が映画の写真のスライドショーのような構成に反映されていて、常に彼女の独白を聴いている構成もかなり強烈で良いのだが、彼女の人生にあった受動的な体験の数々が、写真家としての経歴、そして今のオピオイド危機に対する活動(PAIN)に繋がっていく流れがその構成故に繋がっていくのがいい。
前半での姉の話を後半でもう一度するのが上手い。姉という存在の印象づけと「美と殺戮の全て」というタイトルへの繋ぎも見事。美=芸術と殺戮=サックラー家による犯罪というタイトルでもあるし、ナン・ゴールディンにまつわるあらゆる美と死を表しているようでもある。

一企業を倒すための方法として、メトロポリタン美術館などから名前を消す=寄付を貰わないという方法を取るのは興味深かった。彼女の人生がまさにそれを体現しているが、やはり芸術は「訴えかけること」なのだ。
だから当然、アクティビストとして社会に対して活動することは芸術の本懐なのだ。
個人的なことの先に、芸術があり、政治的なことがある、それを体現しているが体現している大傑作でした。
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