KATO

ボーンズ アンド オールのKATOのネタバレレビュー・内容・結末

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

待望の映画がようやく……制作決定を知ってからずっと待っていた作品の一つだった。キャストも監督も最高。期待を超えてくれた。

■人肉食で描く疎外感と孤独

人肉を食べる衝動を抑えきれないマレン。友達ができそうでも事件を起こすため、誰にも理解されるわけもなく生きてきた。自分のルーツを知るために始めた旅で、ニオイで同族の少年・リーと惹かれあう。互いが孤独で、それでも分かり合えることばかりではなくて……互いに突き放しながらも、支えたいと補おうとする姿が寂しくて切ない。
最初は「ただの友だち」。恋人のような行為も、ごっこ遊びな気がする。結局、お互いに見せ合わなければ本当の関係にはなれない。見せてもいいかもと思える人と出会うのは、奇跡のようなものなのかもしれない。
それは、人を食べようが食べまいが同じだ。見せて裏切られたら、離れていってしまったら……そんな思いが、人をますます孤独にしてしまう。

■サリーの満たされない孤独

マレンとリーは旅先で、さまざまな同族に出会う。

死にそうな人間だけを食べるといい、食べた人間の髪の毛で縄を編む謎の男・サリー。マーク・ライアンス演じる彼は、この映画のホラー要素を担っている。サリーの存在で、この映画はホラーに分類されているレベルだ。
現実世界にもいそうな“かかわりたくなさ”を見事に体現しており、気に入ったおもちゃを奪われまいと駄々をこねる子どものようでゾッとする。孤独に生き続けてきた結果狂ってしまったのか、そもそも狂っていたのかは分からない。それでも、マリンに感じた“初めての感情”に執着しつづけて、2人を追い詰めていく。

サリーは、初めて共に過ごしたい“同族”に出会えた。でも、手に入れる方法を知らない。サリーは自分の飢えを満たしてくれるのはマリンだと信じていたが、マリンにとってのそれはリーだった。お互いに矢印が向かなければ関係が満たされることはない。簡単なようで、それは何よりも難しい。だからこそ、サリーは長年一人だった。そんなサリーの姿は、私たちにとって無関係ではない。誰もが自分は孤独だと感じるし、それを満たしてほしいと思う瞬間がある。サリーは、マリンやリーだけじゃなく、私たちがなりえる姿なのだ。

■若手のキャストが瑞々しく、目が離せない

マリンを演じたテイラー・ラッセルが見せる表情がすごく良かった。うっとりとした目で友人の指を食べ、一つも取りこぼさないというようにリーを見つめる。彼女の視線は思わず目を見張った。

そして、やっぱりティモシー・シャラメが大好きだ。何をしていても目で追ってしまうし、街を歩いているだけでも輝いている。

リーを演じているティミーは、いつも以上に弱弱しくて守りたくなった。目を離せば消えてしまいそうで、手を握っていたくなる。

リーが狙うのは、自分が社会にとっていらないと感じる人間ばかり。品定めをして、誰にも求められていないだろうという人間ばかりを狙って食べる。わざと煽って怒らせたり、自分を性的な餌にして殺したり。自分の食欲を満たすかわりに、必ず自分を傷つける。そんな姿が痛々しくて、やはり守ってあげたいと思ってしまうのだ。相変わらず、ティミーは幻想のような存在である。

ルカ・グァダニーノ監督の作り出す鮮やかな画に、2人ともすごく馴染んで、不穏な題材を取り扱っているとは思えないほどの爽やかさがあった。
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