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ボーンズ アンド オールのrage30のネタバレレビュー・内容・結末

ボーンズ アンド オール(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

人を食べて生きる男女の話。

事前情報を入れずに見たので、まさかの食人映画でビックリ。
このままジャンル映画になるのかと思いきや、そこはルカ・グァダニーノ監督作。
深みのある美しい映像に重厚な演出も加わって、ジャンル映画的な軽さは感じさせない、非常に見応えのある作品になっていましたね。

物語的には、主人公が生き別れた母親を探すロードムービーになっており、その途中で自分と同じ食人人間達と出会います。
相変わらずの美貌を見せつけるティモシー・シャラメ(脚細すぎ!)も素晴らしいんですけど、個人的MVPはやっぱりマーク・ライランスかな~。

一見すると、物腰の柔らかい優しそうなオジサンなのに、見た目や言葉の端々に違和感があって、妙に気持ち悪いんですよね。
白眉だったのがクライマックスのシーンで、涎を垂らしてくるのが最高にキモくて、思わず悲鳴を上げちゃいましたよ。笑
食人人間として一人で生きてきた男の哀愁には共感する部分もあったのですが、結局のところ、環境よりも彼個人の性格に問題があったのかもしれません。

食人映画ではありますが、人に食われる恐怖よりも、食人人間になってしまった人間の孤独や寄る辺なさを描いていく本作。
社会から疎外される彼らの境遇には性的マイノリティーのメタファーを読み解く事も出来ますし、人には言えない趣味や反社会的な思想を持った人間を当てはめる事も可能でしょう。

ただ、どんな性質を持った人間であれ、人を殺す様な真似をする人間はいないし、そんな人間は到底社会には受け入れらないわけで。
つまり、食人人間は究極のマイノリティー、究極のはぐれ者と言えるのかもしれません。

誰にも受け入れられず、誰からも愛されず…。
しかし、そんな人間だからこそ、誰よりも深く人を愛し、受け入れる事が出来るのかもしれない。
文字通り、骨まで愛するという事、愛する人の血肉になるという事。
究極のマイノリティーによる、究極の愛情表現を描いた作品なのかなと、個人的には思いました。
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