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サントメール ある被告のdojiのネタバレレビュー・内容・結末

サントメール ある被告(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

筋書きからはカポーティの「冷血」をどうしても感じさせたし、ありえたかもしれない自分の姿を法廷で感じることは村上春樹の「アフターダーク」内の描写を思い出したりもした。村上春樹は「壁抜け」として歴史を超えた他者の記憶が入り込むことを書いているけれど、本作のラストで語られる「キメイラ=怪物」としての母子の関係性は、男性には持ち得ない、避けることのできない女性たちの事実をなによりもものがたっていて、涙を流す女性たちの姿のカットの連なりが、その事実をとにかく正面から突き付ける力を発揮していた。

周縁にいるものたちとして黒人女性たちを、ステレオタイプに基づいたゲイズではなくまなざすにはどうすればいいのか。そしてそこに子殺しという残酷さな事実が重なるときにわからなさは加速してしまうし、そこにテーマを見出して映画にした作者の挑戦はすごいとしかいいようがない。途中で注釈のように映される「王女メディア」など、知的な多層性にも富んでいて、今後劇映画とドキュメンタリーを交互に撮るような作家としてどんどん飛躍していく方のような気がする。2日連続でトークショーを聞けたのもよかった。ニーナ・シモンのピアノの余韻がまだ残っている。
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