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シック・オブ・マイセルフのdojiのネタバレレビュー・内容・結末

シック・オブ・マイセルフ(2022年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

さだまらないじぶん、についての映画としては『わたしは最悪』が浮かんだりしたけれど、シグネにとって悲劇なのは、彼女はあのあと『sick of myself』を手記として書くことができなかったことだと思う。あまり描き込みはなかったとはいえ、父の不在によって他者から注意が注がれることへの渇望が彼女の中心にあることはあきらかで、それをあまりモンスターとして扱わない方が、ほんとうはいいんじゃないかなと思う。インタビュー写真が掲載された新聞をみつけて、ヒールの踵を上げて喜ぶ彼女の姿はなんだかみていて胸がきゅーっとなるし、たしかに度は越しているものの、だれにでも身に覚えのある観覚がここにはあって、それが極端に肥大化した場合の末路が描かれている。

夢が現実に混ざり込む演出といい、どこかクローネンバーグのボディホラーも思わせるけれど、ラストのフォトシュートの現場で周囲の立像たちに見つめられているようなカットは、まるで美の象徴としてのそれらからみた憐憫のようなものを感じさせるし、カフェで空想のタイトルを語る最中に冗談のようにタイポグラフィが浮かぶ演出など、なかなか気が利いているところがちらほら。次はA24製作ニコラス・ケイジ主演でまた夢をモチーフに描くようなので、それも楽しみ。
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