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蟻の王のせっのレビュー・感想・評価

蟻の王(2022年製作の映画)
3.8

イタリアの地方の人里離れた"塔"で若者たちに芸術の指導をしている詩人のアルドとエットレがローマで同棲していたところ、若者をたぶらかした罪でアルドは逮捕、エットレは矯正施設送りになり、その裁判の行方を描いた話。

イタリアでは同性愛など存在しない前提だからそもそも同性愛を罰する法律はなく、でも同性愛を罰したいから無理矢理教唆罪などという罪で罰しようとしている事件。教唆罪だから、証人が被告を庇えば庇うほど洗脳が解けてないからだ!と言われるがんじがらめ。

誰かのことを好きになる時点でもう洗脳のような状態なんだから、これが有罪なら世の中のパートナーいる人全員が有罪というまさに茶番。たしかに、"塔"に若者たちを囲って意味不明な演劇に興じていりゃカルトっぽくは見えるけど、それが事実かどうかを判定する裁判や新聞全てが終わってる。

そんな中でも負けずに差別に立ち向かう話ではなく、働き蟻のように厳しい環境の中でも密かに助け合って肩を寄せ合うマイノリティって感じの話だった。今公開されてる『正欲』ともリンクしてるなぁと思って、知らない見ようともしてないだけで世の中には密かに肩寄せあって何とか毎日を生きてる人がいる。

その蟻を見つけられるか、見つけて殺すのか閉じ込めるのか放置するのか観察するのかは自由だけど、どうなったとしても蟻達は変わらず群がり続けるってことかいね。
せっ

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