このレビューはネタバレを含みます
率直に言ってあんま面白くはない。
なんというか、スベりすぎた芸人が「芸から降りる」ことでより一層サムい空気になるあの瞬間……を大げさな映画にしたような感じ。
ただ、そういう作品になるよう(おれたち観客が白けるよう)仕向けてる可能性はある気がする。
おれはバットマンを観たことがないからジョーカーがどう悪いヴィランなのか知らないんだけど、ヴィランに感情移入して共感、熱狂する人たちがたくさんいる状況は好ましくないというか、模倣犯が出かねないというか……とにかく熱狂を冷ますところまでやるのが製作者たちの責任なのかもしれない。
そういう意味では、この2作目で完成したと言える?のかもね。
内容としては、惨めで虚しいものだった。
特に法廷でのゲイリーとのやり取りはなかなかくるものがあった。
前作でアーサーは「失うものなど何もない」的なことを言っていたけど、互いの痛みを思いやって分かち合えていたはずの唯一の友人を失っていたんだな〜。
そして手に入れたはずの喝采もアーサーではなくジョーカーに向けられたもの。
自分の味方として接してくれる弁護士もパターナリズム丸出しで、ジョーカーではない自分を弱者扱いしてくる。
リーが恋をしているのもアーサーではなくジョーカー。
冒頭のカートゥーンが象徴していたように、「ジョーカー」という影がおいしいところばかりをかっさらっていく。病気持ちで貧乏でジョークもおもんないガリガリのオッサンのアーサーなんか誰一人として見向きもしない。
アーサーのことをアーサーとして見てくれていた唯一の友人も、ジョーカーに怯えて去ってしまった。
リーと出会って「自分は変わった」「もう独りじゃない」とアーサーは言っていたけれど、彼はもともと独りではなかったし、何も変わってなどいなかった。
手に入ったと思ったものが全て両手をすり抜けてこぼれ落ちていく虚しさ。
妄想と芝居がかった言動で喜劇のように取り繕ってみても悲劇らしさが際立つばかりで、それがなんとも惨めだった。
ラストでリーから「あなたは諦めた」と失望されるところがまた辛い。
アーサーとして無罪を勝ち取る戦いからも降り、ジョーカーを演じ続けることからも降り、自らの罪からも逃げてきた男が「自由だ」とのたまう。
そこへのカウンターパンチとして効きすぎるだろ、それは。
なんだか自分まで責められているようで、なかなかしんどかった。
逃げてばっかだとどんどん追い詰められるだけでよくないね、ホント。