ベルベー

ちひろさんのベルベーのネタバレレビュー・内容・結末

ちひろさん(2023年製作の映画)
2.6

このレビューはネタバレを含みます

まあこれは明確にスタンスの違いだ。少なくとも一部で叩かれているようなミソジニーの映画ではない。しかし、原作が刊行された年と現代との違いは大きくあると思う。セックスワーカーに癒されて元気になる。別に否定することではない。

しかし、そのセックスワーカーは誰が救ってくれるのか?そこに回答がなくて済んだ時代では、最早ない。そのことに製作者が気付けていれば、或いはもっと今の人達に響く映画になれたのではないか。少なくとも現状のオチで満足しているなら、世界に日本オリジナル映画として大々的に打ち出すべきではないと思った。

セックスワーカーに関する物語を「今」描くには、今回の原作者と監督は不適当だったと思います。代表作が「ショムニ」の漫画家と、JKとラブホテルに入る映画を直近で撮ってた人なので。思ってたよりはずっとマトモな描き方だったけど。それこそ世間で批判されているミソジニー的側面が出てくるのでは…とすら危惧していたけど、かなり配慮されていたように思う。女子高生の父親の生々しいハラスメント言動など、日本の家父長制の悪性についてはっきり批判している。

ただ本作はそこ止まりで、そんなボロボロの日本をセックスワーカー(今はお弁当屋さんとか結局作り手の言い訳でしかなくて、事実1人セックスで救ってるわけだし)なら癒してくれる、という淋しい諦め、希望でしかない。セックスワーカーに癒しを求め、(男女問わず)癒しを施さなかった結果、今の彼女達の苦境があると思うので。そういう意味では由々しき映画かもしれないな。日本が今抱える社会問題の一つと直結している、その問題が解決していない(どころか解決させる気がある人が少ない)ことを象徴している映画かもしれない。
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