これまでの今泉力哉作品とは違う感じがしたけど、
有村架純との相性はバッチリでしたね。
冒頭のネコに寄り添うところからして
もう有村架純の使い方として間違いないなと確信して、
かなり安心して見てたんだけれども、
そりゃ当たり前なんだけどちひろさんは揺らいでいき、
だからこそ忘れがたい傑作になってると思う。
誰にでも気持ちよく接することができ、
気ままに楽しく生きているように見えるちひろさん。
でも実際には「ちひろ」自体が源氏名で、
元祖ちひろへの憧れが原動力になっていたとわかってくる。
彼女が打ちのめされ、それをひた隠す中で、
元祖ちひろに出会い、店長に会い、
弁当屋のおばちゃんに出会う。
彼女は彼女を生かしてくれた彼らを模倣し、
彼らを近づこうとする中でちひろさんになっている。
とは言えちひろさんはフィクショナルな存在であり、
悩める女子高生ややんちゃなクソガキにも
こんなに狙い通りズブズブ刺さらないです。
あんなユートピアみたいな廃墟はないし。
でも人からは見えない痛みや苦しみに
ほじくるんじゃなくなでるように触れ、
たさかにこういう瞬間が誰にでもあり、
やっぱりだからこそ同じような痛みや苦しみに出会ったときに、
自分ができることはしてあげたい。
なぜこんなに苦しくても人にコミットするのか?
迷ったときに思い出しそうな作品です。