みりお

MY HOMETOWNのみりおのレビュー・感想・評価

MY HOMETOWN(2022年製作の映画)
3.7
TAMA NEW WAVE一般審査員として鑑賞🌟
東放学園映画専門学校を2年次で卒業する際に、古川葵監督が卒業制作として作った作品。
そして主役の空花さん、ベスト女優賞おめでとうございます🎉✨

何者でもない自分への焦燥と受容。
大人になれば、何者かになれると思っていた自分。
でも"大人になる"時期は意外とすぐやってきて、何者にもなれず、このまま小さく埋もれていくのかという不安は、すごくわかる。
そして、いまこの場所から旅立てば、ここではないどこかへ行けば、何者かになれるのでは?という楽観的な考え。
きっとまた打ちのめされるのだろう。
また何者にもなれず、場所を変えたり、戻ってみたり、そんなことをしながら人は、自分の姿を受け入れていくのだろう。
とても虚しいはずなのに、とても希望に満ち溢れたラスト。
希望を感じる理由は、「まだ何者かになれる」と思っていること自体が、若さの象徴であり強さだから。
きっと照子も、「何者かになる」のではなく、「この場所で何かを守る」ほうが、よっぽど難しいことに気付くはず。
そのとき祖母や母はいないかもしれない。
でもそのときは、今度は照子が、何者かになりたい我が子を必死に羽ばたかせればいい。
そうやって希望は繋がっていくのだろう。


【ストーリー】

片田舎のとある団地で、祖母と母との母娘3世代で暮らしてきた照子。
高校卒業後は地元のスーパーで母と一緒に働く毎日を送っていたが、団地の取り壊しをきっかけに、東京の大学へ進学することに。
ある日、照子の元に長らく音信不通だった父親から突然の連絡がくる。


【監督からのメッセージ】

親元を離れて暮らすようになり、家族として過ごす時間は有限であると気づいたところから、家族関係の難しさと温かさについて描きたいと思い、物語の着想を得ました。自分自身の家族を見つめることからスタートした制作でしたが、完成したものには、普遍的な家族関係、人間関係、そして社会のありようが映っていると思っています。登場人物たちの温度ある生活を通して、一瞬でも、観てくださる方の人生とリンクできましたら幸いです。
みりお

みりお