ハル

少女は卒業しないのハルのレビュー・感想・評価

少女は卒業しない(2023年製作の映画)
4.1
2022東京国際映画祭にて。
来年に稲垣吾郎×新垣結衣のコンビで『正欲』の映画化も決定している話題の作家、朝井リョウ原作モノ。
事前情報無しの鑑賞だった為、“14歳の栞”のような卒業までの期間を追っていくドキュメンタリータッチの作品を想定していたが、前日から卒業式当日までの凝縮された物語だった。

メインの四人、それぞれのエピソードが詳らかに描かれていて懐かしくもあり、切なくもあり。
特に河合優実の存在感が凄かった、記憶の中にある感触を具現化させながら鑑賞者にも、そこにある姿を共有させるお芝居。
「この1、2年で一体どれだけ出てるの?」って調べたくなるほど、多くの作品に出ているのも納得。

人生にはその瞬間しか味わえない特別なイベントが何度か訪れると思うけど、卒業式はまさにそれ。
監督が話されていたシンパシーを感じつつ“自分のときはどんな感じだったかな?”と思いを巡らせてしまう美しくも透明感タップリなエピソードの数々。

泣いちゃう人もいれば次へのステップとして達成感で満たされる人もいて、感じ方次第で姿を変える不思議なイベントこそ“卒業式”
登場人物たちそれぞれの多種多様な感受性もしっかり表現されているので、どのパターンの人にも何かしら刺さるモノを含む一作に思えた。
みなタイプが違っていて秘めた思いや学生生活への振り返りも千差万別。
追体験型の作品だからこそ滲む感情、楽しさや憂いを含んだ不思議な気持ちにさせてくれるね。

そして、この作品は映像が少しザラツイていて、この工夫がレトロな感じと静謐な感覚を想起させ、良いスパイスにもなっている。
監督とカメラマンの話し合いの末、敢えて施したというこの演出は秀逸だった。

ちなみに会場では誰も笑っておらず、僕一人だけクスッとさせられたポイントも。
それは女バスの二人が話しながらフリースローを打つシーン。
一人の女の子がリングに投げキッスをして『ジェイソン・キッド』と言うんだけど、当時NBAを見ていないと絶対にわからないネタ。
NBAフリークのごく少数だけがツボにハマる遊び。
こういう小ネタは最高だし、監督は元バスケ部なのかな?など考えてしまう、印象的な一幕だった。

最後に一つだけ。
卒業式の雰囲気や感じ方をつらつら書いてきたレビューだけど、僕は高校中退からの高認→大学ルートなので高校の卒業式出ていないんですよね(笑)
そこだけすみません。
ハル

ハル