宇尾地米人

パリタクシーの宇尾地米人のレビュー・感想・評価

パリタクシー(2022年製作の映画)
-
 題名こそパリのタクシーですが、運転手さんがひとりの老婦人を乗せてお話しドライヴに付き合ってあげるという粗筋だけ読んで、ほほぅこれは『ドライビング Miss デイジー』とか『不機嫌な赤いバラ』みたいな、あれらのフランス版みたいなところかなと思っておりました。最初は。

 で、観てみると何ともいい作品でビックリしました。フレンチのヒューマンタッチとパリの景観が見事におさめられていて、その真剣さに感嘆しました。クリスチャン・カリオン監督はフランスではなかなか有名な人で、本作では脚本と製作を兼任しているほど、その力の入れようと鋭い仕事ぶりに参りました。

 この老婦人は苦労人の運転手さんとお話ししたくて、段々と、昔の思い出話を始めていきます。「若い頃は大変でねぇ。熱々だったねぇ」運転手さんも最初は「ふぅん。へぇ」みたいな感じだったんですが、お話を聞いていくうちに、なんだか気になってきて、少しずつ、ほぅほぅと聞き入っていくわけです。この老婦人、ええっ!と驚くような事情があったんですが、それはどういったものか。それは書き記せませんが、ほっこり愉快な話では終わらないことは分かってきます。

 ところでこの映画は先日観た『丘の上の本屋さん』と通じるものがあります。あちらはイタリア。こちらはフランス。テーマや背景も異なる2作品ですが、観たあとの余韻には通じるものがあります。このように、まったく別々の作品ながら、共通する面白さがあったり、逆に大きく異なる点に気付ける発見があることも、いろいろな映画を観てみる醍醐味だと思います。
宇尾地米人

宇尾地米人