滝井椎野

パリタクシーの滝井椎野のネタバレレビュー・内容・結末

パリタクシー(2022年製作の映画)
4.3

このレビューはネタバレを含みます

静かで優しい、とても愛しい作品だった。
ついつい熱い涙が止まらなくなる傑作。

タクシーから眺めるパリの街並みが美しい。その街並みをマドレーヌの人生というフィルターを通すことで、ただ美しいだけでなく人々の生活という甘いも苦いもあるものへと変化させる手腕が素晴らしかった。

マドレーヌの過去はなかなか壮絶であるのだが、その優しい語り口のお陰か一つの歴史へと昇華している。それを運転手のシャルルと同じ目線で聞くことで、彼と同じようにどんどん彼女のことが好きになる。
このシャルルのキャラがまた良くて、無愛想な彼の表情がどんどん柔らかくなっていくのが良い。それがあるからこそ、ラストでの彼の涙にこちらも共感出来た。

タクシー運転手と乗客の心の交流を描く作品といえば、思いつくのは『ナイト・オン・ザ・プラネット』だが、本作も同ジャンルの傑作として語り継がれてもおかしくない作品だろう。
観終えたあとはタクシーに乗って自分の生まれ育った街を見て回りたい気分になった。
滝井椎野

滝井椎野