モスリン

桜色の風が咲くのモスリンのレビュー・感想・評価

桜色の風が咲く(2022年製作の映画)
3.4
盲ろうを抱えながらそれを必死に受け入れ前に進もうとする本人と周囲の、努力と愛とアイデアの話だった。

視力、聴力が失われていく過程の本人の葛藤・苦悩、それを受け入れるしかないと悟っていく諦念みたいな部分や、それを支えようと心を砕く家族と、周囲の人々の心の寄り添いが特に丁寧に描かれていたように感じた。
特に支える側であった家族や周囲の人々の葛藤や寄り添いには自分も見た・体験したことのあるようなものを感じていた。
間違い試行錯誤しながら、泣き、わめき、喜びあう姿には演じられていた方々がこの作品やモデルとなった方々の人生に敬意を込めて真摯に向き合われていたのだろうなという思いも感じグッときました……。

ただ個人的には心象風景的な部分が強めだなと感じたところもあり、具体的な生活というか、そういうものも描かれていたら良いなと思っていた。

さまざまなマイノリティに関する映画が沢山描かれるようになったことはとても素晴らしいことだと思うが、悲しみとか辛さにフォーカスされた作品がとても多くて辛くなることが多い。
括られると自分もそういうものを持っているだけに、もちろん辛いことも沢山あったしあるけれけど、それでいいし、それが自分なりの普通でまあまあ楽しく暮らしてる、みたいな作品がもっと描かれて欲しいと思う。
リアルな人生、ドラマティックで劇的・悲劇的だとしても、この世界に生きている限り暮らさなきゃいけないから……。
マイノリティをテーマとして取り上げたそのつぎは、そういう人たちの根底のフツーの暮らし自体ももっと描かれていってくれることが本当の希望になっていくんじゃないかなと思う。

それから大好きな詩人の吉野弘さんの詩が作中に登場していたのがとても嬉しく、サプライズポイントでした🙏
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