モスリン

陽暉楼のモスリンのレビュー・感想・評価

陽暉楼(1983年製作の映画)
3.5
異次元の少子化対策~とかいろいろTVで報道されている今日この頃。
この作品を鑑賞したら、なんか色々考えてしまった。

昭和初期の設定。女性の置かれている状況が現代とそれほど変わっていないことに驚く。
哀しみの果てに女性の生き死にが描かれていて、それが人の儚さや美しさだというような表現の映画だった。
とても美しくて好きな作品になったことは間違いはないし、これまでこの国ではそういうことが当たり前の価値観であったことは過去の話なのでどうすることも出来ないけど、こりゃあまりにひどい……。
登場する男性たちが良いところだけつまみ食いして、あとは知らんぷりしてるだけに見える。
芸者や女郎であった彼女たちの瞳の底には現代と変わらない世界への批判的な情念みたいなものを感じた。
この映画自体は、そういう社会的に不遇な立場に置かれた人たちの人生を描こうとしていると思う。ただ……彼らが残酷美的に映されているのはただただ見ていて辛くなる。
この時代も、現代も、自分たちに都合のいい人間や女が欲しいだけなのかな~イカれてるぜ……

浅野温子さんが演じる跳ね馬みたいな少女・珠子と池上季実子さん演じる薄幸の芸者・桃若が対比的に表現されていた。
桃若は珠子と出会って初めてあんなに感情をむき出しに出来たんじゃないだろうか。

あと緒形拳さんがむちゃくちゃ最高でした……。
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