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福田村事件のsunflowerのレビュー・感想・評価

福田村事件(2023年製作の映画)
5.0
ネットも無い時代。
情報伝達速度、量ともに、現代とは比較にならなかった時代に、日本人が起こした凄惨な事件。

でも、「時代が違う」では決して片付けられないし、そんな軽薄な言葉で片付けて良いはずがない。


この作品を観ながらひたすら感じたことは、いかなる環境、いかなるシチュエーションに置かれても、とにかく冷静さを欠いてはならないのだということ。

冷静さを失わなければ、例のあの場面でも、あと少し待つということが出来ただろうし、
少なくとも、瞬間的に誤った判断を下してしまうリスクはかなり避けられたのではないか。

ただ、頭では分かっていても、いざあのような場面に出くわすと冷静さを失ってしまうのが人間。ということも理解できる。

集団心理とは、かくも恐ろしい。
かくも簡単に、人間を悪魔に変えてしまう。
一瞬にして。


"彼らは過去の日本人であって、現代の日本人はこんなことしない"なんて、誰に言えようか。

時代が変わっても、その時代その時代に即した形態での悲劇が、世界中で起こり続けている。

人間の本質的な部分なんて、どんなに時代を異にしようが、国を異にしようが、しょせん変わらないように思う。哀しいかな。

でも、だからこそ、自分が知らず知らずのうちに闇に落ちないように、定期的にこういった作品を通して、人間の闇、自分の中にも存在し得る闇を自覚しておくことは、大きな意義があるように思う。


人間が持つ哀しい悪、恐ろしい悪が、克明に描かれている渾身の作。


森達也監督の作品をずっと追いかけてきた私としては(レビューは未投稿ですが)、森達也監督らしい冷静で客観的な視点が詰まった、とても"らしい"作品であると感じました。


どの俳優さんも見事でしたが、やはり、永山瑛太さんは抜きん出ていますね。
一言で全部持っていってしまう凄み。
素晴らしかったですね。



あ、ほんと個人的な意見、というかここに書くようなことじゃないかもですが、高橋雄裕さんやカトシンさんが出演なさっているのが、とても嬉しく思いました。
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