メザシのユージ

ロスト・キング 500年越しの運命のメザシのユージのレビュー・感想・評価

4.0
「持病のある中年の女性」ということだけで、会社で正しく人事評価されない主人公のフィリッパ。

そんな彼女がシェイクスピアの「リチャード三世」を観劇する。芝居の中で彼は病気で曲がった背骨と、背中の醜いコブの見た目から「僻みや妬みで世間に恨みをもった残酷な悪の王」として演じられる。

「体に病気や障害があると世間に恨みを持つのか?背骨が曲がると性格まで曲がるのか?」そんなシェイクスピアの描くリチャード三世の姿に疑問を持ったフィリッパは彼の墓を探そうとする。良い王様なら、どこかに正しく埋葬されてるはずだと信じて。

この映画は事実を元にした物語で、リチャード三世の墓は実際に彼女の功績で発見され世界的なニュースにもなった。フィリッパは社会的に正しく評価されない事がどれだけその人を苦しめるかを、そしてリチャード三世は実際には誰も目にしてないのに、悪いイメージだけでその人を判断することの危うさを描いていて、その危険性は現代社会でもそのまま当てはまると思う。

ひとりの女性が墓を探すという、とても地味な展開になりそうだが映画の中の劇伴が素晴らしく全てのシーンを盛り上げてくれるし、フィリッパの前にだけ姿を表すリチャード三世の幻影がとても映画的な表現で面白かった。

テンポも良いし主演のサリー・ホーキンスの演技も上手いし、何か良い映画観たいなと思ったときには迷わずオススメの1本。

あと歴史的な公文書って大事だな!!と思った(笑)