木蘭

ロスト・キング 500年越しの運命の木蘭のレビュー・感想・評価

3.2
 世界を駆け回った「駐車場から謎だったリチャード三世の墓所を発見!」というニュースの裏側にあった話を、イギリスらしい人情とユーモアあふれるコメディに寓話化。

 全体として作りのセンスが良いし、俳優達も上手いので見ていられるのだが、ヒロインがリチャード三世にのめり込む切っ掛けや、謎を解いていく過程の描き方が弱いので、今一つ感情移入出来ない。
 つまり着火力と推進力が弱いので、見ているこちらの心のロケットが大気圏を越えない...上手い事、着地はするし、弾道も綺麗なんだけどね。

 劇映画化に当たって脚色は当たり前なんだが、それが上手くいっていない。
 現実のフィリッパ・ラングレーさんは普通に本を読んで興味を持ったのに、映画ではシェークスピアの『リチャード三世』を観劇中に使命に目覚める。劇的要素を狙ったんだろうけど、このシーンの描写がパッとせず掴みが弱い。
 人一倍頑張っているのに「持病持ちの年増女」とされる自分への無理解への憤りを、偏見に満ちたリチャード三世への評価と重ね併せているのがヒロインを突き動かす動機なのだが、演出が悪くて今一つ伝わってこない。
 特に周りから理解されにくいウイルス感染(インフルエンザ)の後遺症の描写が、観客にも理解しづらい。普通に疲れている様にしか見えない・・・そこがリアルなんだが、劇映画としてはどうなんだ?

 1番の問題は謎に迫っていく過程。
 劇中、あれよあれよという間に...それこそ数ヶ月で...墓所の発見に至るので、なんでこんな簡単に解決する問題が謎のままだったんだ?という気になる。
 実際は彼女がリチャード三世協会の扉を叩いてから調査開始まで4年、遺骨の発見までに8年掛かっているし、発掘調査も長い紆余曲折の中、不断の努力で乗り越えているのに。

 それ故に、学界の人間は固定観念と権威に囚われたバカばっかりで手つかずだった問題を、急に目覚めたエキセントリックな中年女性があっという間に解決する...みたいな話になってしまっている。
 残念。

 しかしこのヒロイン、チョイチョイと男からすると「ウヘェ...」って言いたく成る様な辛辣な態度をサラッと元夫に取っていて、過去に何があったのかは知らないけど、見ていて辛い。良い夫そうなのにぃ。
木蘭

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