きんぱち

ヒトラーのための虐殺会議のきんぱちのレビュー・感想・評価

ヒトラーのための虐殺会議(2022年製作の映画)
3.5
ヒトラーの映画と言いつつヒトラーが出てこない映画。

本人がいない中でも会議出席者の中でのヒトラーの存在の大きさが垣間見える。

記録に残っている過去の史実に基づいて作られているので決して派手さはないし、劇的な演出もない。

舞台を観ている気持ちになる、全編会話劇の人間ドラマでした。
それぞれの人物の駆け引きや足の引っ張り合いが会議の空間の中で展開している。これを舞台で観たらおもしろいだろうなぁという感じの映画。


現代社会じゃあり得ない議題を平然と且つ淡々と語る当時のナチスの幹部たちの恐ろしさが際立つ。改めて振り返るとゾッとする内容、ユダヤ人絶滅計画をまるで自分たちは世界の平和のために行なっているという現代の自分たちとはかけ離れた感覚。

特別処理と称して虐殺した人数を誇らしげに報告する様子なんか…この会議と言うかこの舞台や会議や登場人物全てが狂気に満ちていると言うのが、淡々とした語り口で強調されていてますます怖い。

会議も一筋縄では行かない様子が描かれているけれど、結局のところ結論は決まりきっており、過程をどうするかというかだけの話しだったという会議の無意味さ。

登場人物の中に良識人がいたと思ったら、結局は虐殺に関しては誰も疑問に思っていなかったというオチが虚しかった。

BGMも音楽も一切ないエンドロールが、本編で描いてきた中身が全くないということを見せているように感じた。

多分思い込みだと思うけれど。

こういう映画を当事国のドイツがしっかり描いているというのも意味があると思いました。
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