このレビューはネタバレを含みます
「多様性」と一言に言っても難しい。様々な人が存在するということ。お互いを認め合うということ。どんな在り方であってもそれが"当たり前"として認識される世の中であればいいけど実際難しい。そんな所謂"普通"からズレていると感じながら生きることの苦しさが丁寧に描かれた作品だった。
多様性については近年様々な作品で描かれているけど、"多様性を受け入れられる社会であったらいいね"と言われているが、そもそも何故"受け入れる姿勢という上からなのか"というところから突っ込んでいる本作はなかなかに鋭い。自分の私生活を振り返ってもそういう風に見てしまっている部分は絶対になかったとは言い切れない。
圧倒的少数派に属した時に、それを共感出来る人が一人でも居たら本当にありがたいし、逆に誰とも分かち合えないのは本当に寂しい。本作の登場人物たち程ではないが、私自身もなかなか趣味の合う人が周りにおらず、普段も大体一人で過ごしてばかりだったり、迷惑にならないように死ぬ為に生きてるって気持ちも分かるので、本作の登場人物たちに凄く共感出来た。
本作のメイン二人のパートナーとしての形、とても素敵だと思う。恋愛感情がなくても、お互いしか分かり合える人がいないのであれば、そういう形での結婚も有りだなと。
頑なにそんなことあり得ないと自分の価値観から外れた現実を見ようとしない稲垣さん演じる警察官。悲しいことに現実にああいう人もいるんだよなぁ...。ああいう人と分かり合える日は来るのだろうか。
そしてラスト。巻き込まれて捕まってしまった二人の未来に幸があることを祈らざるにはいられない。非常に刺さった一作だった。
