kao

正欲のkaoのレビュー・感想・評価

正欲(2023年製作の映画)
4.0
近所に噴水がありましてね、この映画をみてから通りかかるたびに桐生さんと佐々木くんを思い出してしまいますのよ。

何が普通かなんて、そんなもの1つのパターンしかないわけないじゃない?人の数だけ個々の普通があるのよ。だいたい昭和1ケタ世代が幸せのモデルみたいな型を作って、それに当てはめた十把一絡げ的な教育をしてきたから生きづらさを日常抱えている人がゴマンといる現在の日本になっちゃったんじゃないの?と人生後半になって今さら気づく。

冒頭シーン、二人の目の死んでる度が半端なくて、特に新垣結衣さんはえ?ん?誰?って感じだった。不機嫌に蕎麦を喰らうシーン、等等、一切笑わない新垣結衣、新境地。オーラ皆無。
中学生の時のシーン、そして大人になってからの公園で蛇口からの水しぶきが美しくて、佐々木くんと桐生さん、ほんとにいい顔してたなあぁ。。。好きなものはそれぞれ違えど、人はやっぱり好きなものに触れていると生き生きとしてくるものなんだねぇ。二人の出会いは奇跡的。砂漠で同じ嗜好の仲間を探す蟻のごとし。
水が好きって、二人のレベルが特別過ぎて中々共感できないけど、元々人間は羊水の中にいて産まれてきたわけだから何か本能的に満たされるし落ち着くのかも。
様々な欲望は基本、他人から理解されるか否かは関係ないと思っている。仮に人の嗜好性に共感できなかったとしても「へぇ、そういう楽しみや感じ方があるんだねぇ」って適度な距離感でいたらそれで良い話だと思う。そこでキモチワル、とか言わんでも良いことを口走る輩がおるから生きづらさが生まれるし分断がおこる。
欲とは、大前提として、欲を満たす為に相手があって成立することならば万事同意無しに無理やりするのは絶対NGと思う。

稲垣吾郎さんは本作で初めて。さすが安定感。はまり役。子供はいちいちちゃんとお父さんに本音で自分のやりたいことをプレゼンしてお願いしているのに門前払いでかわいそうすぎ。やりたいことがみつかっただけで万々歳じゃないか。

大学生の女の子とダンサーの男の子との講堂でのシーンはとてもリアルで圧倒された。真剣な言葉の数々から発せられるエネルギー。彼女の過去のトラウマと感情の狭間で揺れる苦しさが伝わってきて。

桐生さんと佐々木くん、あぁたたちそこまで水が好きならば水泳選手になるとかどう?いや恍惚感ゆえ、かえって集中して泳げないか(笑)
はたまた二人で風呂屋を営むとかしたら?温かい水だけどじゃぶじゃぶ音はずっと聞いてられるよ、などと妄想は今宵もとまらず。


大事に想う人への言葉を10字以内で述べよと言われたら私はこの言葉を言おう。
「いなくならないでね」
kao

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